東北の日本海側、秋田県と山形県の境に「鳥海山」というたいそう美しい山がある。高さは2237メートルあり、山形県側は遊佐町、秋田県側は象潟町に属する。「象潟町」は「きさかたまち」と読む。わたしの知り合いに、「ゾウがたまち」と読んだ奴がいたが、それは大間違いだ。松尾芭蕉がここで、「象潟や雨に西施(せいし)がねぶの花」と俳句を詠んだことで有名な町である。この俳句の意味は?と、広辞苑を引いたら、「西施」と言うのは、「中国の、春秋時代のものすごい美女」とあった。とするとこの俳句の意味は、「しとしとと降る雨にけむる象潟に、合歓(ねむ)の花が咲いている様は、とても此の世の物とは思えない程美しい」。と解釈したけれど、これで良いのか な?。
象潟は、名前の通り昔は海で、日本三景の中の「松島」のような島々の点在する美しい景勝地であった。それが大地震のせいで地面が隆起して、今では田圃になっている。いまでも、田圃の中に九十九島が点在し、四季おりおりに美しい景観である。是非一度おいでいただきたい。
さて、そろそろ「妖怪の森」の話しに入ろう。象潟の駅から車で20分くらいの所に、「中島台リクリエーションの森」という所がある。この森は一帯がブナの林になっていて、そのブナがまた、そんじょそこらのブナとは訳が違うんです。どう違うかと言えば、みんな武者立ちなんです。すなわち、地面から2、3メートル位のところで、何本にも枝が別れていて、木のコブもいっぱい有り、おばけブナとか、奇形ブナとか言われているんです。私も仕事柄あちこちのブナ林を見て来たがこれ程面白い森は他には見たことがない。最近の調査では、むかし、まだ薪の時代に、木こりが炭焼きをする為に、木を切ったのが原因だということが分かって来た。根元から切ってしまうと、木が死んでしまうので、丁度脇芽が出て来るように、上手に木を切っていたのである。
木を切っていた期間は、約200年前から50年くらい前までとのこと。
昔は今と違って雪が多く積もり、冬の時期に切っていたのである。このように、積もった雪の上からの伐採を繰り返す事により、独特な形をした奇形ブナが誕生した。このようなブナは、新潟県や山形県にもあり、「あがりこ」と呼ばれている。
それでは、なぜ、鳥海山にだけこれ程多くの「奇形ブナ」が残っているのか?。それは「鳥海山」が国定公園に指定されたからで、他の地域の奇形ブナは「役に立たない木」として伐採されてしまったからである。
林の中にいると、いまにも白雪姫とか、小人とかが出てきそうな気がして楽しい。わたしは勝手に「妖怪の森」と呼んでいる。