NO.11 桃畑の1万円のコーヒー (山梨県八代町)

富士山が、一番スマートに見える所といえば、やはり河口湖。それと、反対側の三保の松原。どこから見ても、富士山は富士山なんだが、わたしは、この角度が1番美しいと思う。日本1の富士山を拝むと御利益があると思い、よく元旦に富士山を写しに行ったものだ。しかし、わたしにはあまり御利益が無かったようで、いつのまにか行かなくなってしまった。富士山を見るなら、12月の下旬から1月の中旬くらいまでが、1年のうちで一番天候が安定している。行けば必ず見える。はず。

河口湖の北の方に、峠があり、そこを御坂峠(みさかとうげ)と言う。トンネルがあり、向こう側は甲府盆地。トンネルの手前の旧道を右に登って行くと、茶屋があり、文字どおり「御坂峠の茶屋」という。ここで、あの太宰治が、たぶん団子などを食いながら「富士には 月見草が よく似合う」と言った所である。月見草とは、本来白い花なんだが、一般的には、黄色い花を月見草と言っている。黄色い花はマツヨイグサ。太宰は、どっちの花を見たのだろうか?。冬にしか行った事がないので、今度、確かめに行こうと思っている。

さて、トンネルをくぐると、そこは桃源郷である。一の宮、御坂、八代など、4月の中旬になると、そこいら中、桃の花だらけで、それはそれは美しい風景が見られる。

ある時、道路脇に車を止め、さてこの辺で撮ろうかと、車を降りてキョロキョロしていると、車を引っ張ってくれと、頼まれた。見ると、突き当たりの所に、白いクラウンが、後輪を落としていて、その前に1BOXが1台、一生懸命引っ張っていた。2台で引っ張ればすぐに上がるだろうと思っていたが、なかなか上手くいかない。わたしの車は、土方を乗せるマイクロバスではあるが、車自体はまったくの非力である。それでも、苦労の末、やっと上手くいった。やれやれと、ホッとして車を元の所に戻し、そこに居た桃畑のおばさんと、世間話を始めた。わたしは、写真も好きだが、知らない人との井戸端会議にも、目がない。そこへ、先ほどの練馬ナンバーの、白いクラウンの御夫人がやってきて、「先程はどうも、これでコーヒーでも」と言いつつ、札束を、いや、四つ折りにした紙幣を差し出したんです。「どうぞ」「いやいや」「どうぞ」「いやいや」と問答していたら、私のGパンのポケットに、スッと入れて「じゃ〜ね〜」と行ってしまった。1BOXの人達も、窓から手を振り振り行ってしまった。

夜になって、食事でもしようかと、甲府の町をウロウロしていたら、ふと昼間の事を思い出した。ポケットに手を入れて、びっくり。てっきり千円札だと思っていたのに、「一万円だ〜」。

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