NO.16
銀バエと干し柿

私の家には大きな柿の木がある。2階の屋根よりも高い。
多い時には400個、少ない時でも100個くらい採れる。大きくて形のよい柿だが渋柿である。
隣の家にも柿の木があって、秋も深くなって来るとあるじが柿の木にはしごを架けて「柿もぎ」が始まる。
毎年、それを見てから我が家も「柿もぎ」を始めることになっている。
隣はベテランの農家である。だから柿のもぎ時はおとなりさんに任せてある。
毎年秋になって柿の実が色尽いてくると、お隣さんが「柿もぎ」を始める日を今か今かとじっと待っている日々が続く。
だからといって、お隣さんが柿を採り始めたら「それー」とばかりに我が家も始める訳にはいかない。
すぐに採り始めたらお隣さんの真似をしているのがバレてしまうので、すこーしずらすのがポイント。
柿くらい勝手に採ればいいようなもんだが、まあ、近所付き合いって大切ですから。
何時だったか柿を採らない年があったが、その時は鳥の大軍が押し寄せてきて我が家はヒッチコックになってしまった。
以来、10個くらいは景観と鳥の為に残して置くが、あとは殆ど採ることにしている。
100個くらいは干し柿にして、あとは人にあげてしまう。
数年前、あるポカポカと暖かく天気の良い日があった。なにげなく干し柿を見たら一匹の大きなハエが止まっていた。
追っ払ったら急に数が増えた、小さいハエや蜜蜂とかがわーっと一斉に飛び立った。
こんなに居たのかとびっくりしながらも、とにかくシッシッと追っ払った。
虫どもは一度は飛び立つんだが、1メートル位逃げたふりをしてすぐに隣の柿に付っつく。
この時期、他に食べる物が無いと見えて、ハエどものしつこいこと、しつこいこと。
虫どもの中で一番汚らしいのが銀バエだ、日がさして暖かくなるとどんどん飛んでくる。
ぶ〜ん.ピター。ぶ〜ん.ピター。とにかくその汚らしいこと、汚らしいこと。
結局、形の良い干し柿が出来たんだが、あの無気味な銀バエがベタベタ触ったかと思うと、気持ち悪くて一個も食べることが
出来なかった。
かくして、次の年から我が家の干し柿の干し方は、完全防銀バエ対策を取る事となった。
それがこの「防虫網銀バエ防御法」である。まあ、情緒も無いが、仕方も無い。

さて、世の中には「見なければ良かった」という事が多々あります。
毎年、自分で干し柿を作っているあなた、「しまった、ここ読まなければよかった」と思っている事でしょう。
わたしはすでに見てしまったからしようがないんですが、あなたはまだまだ大丈夫ですよ。
ぽかぽかと天気の良い日に、干し柿の出来具合いを、見なければいいんですから。